だらだら日記
基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。
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9cmの距離(00)
ブログに00小話7日目?
アレティエですー。今日も思いつきとノリと勢いと萌?の話。
実は本当は連続小話始めた最初は、アレティエだけじゃなくて幻水話とかシズイザとかも書こうかと思ってみたのですが、すみません、ちょっと今回はアレティエだけで突っ走ってみたくなって……。
でも本当その内シズイザは書きたいし主リウも坊ルクもネタが溜まってきてますので、うん、その内書くよ!
今日も拍手いただいている方本当ありがとうございますー!!
励まされます……!
9cmの距離
「それじゃ、何か飲み物を買ってくるね。ティエリアはここで待っていて」
「ああ」
疲れた様子のティエリアを気遣いながら、その隣に抱えていた買い物袋を置くと、周囲を見回して危険そうな人物(ティエリアにちょっかいを出してきそうな人物のことだ)はいないことを確認して、アレルヤは近くの売店へ走っていった。
一方で残されたティエリアは、日陰のベンチに座りながら心底辟易していた。
休暇のために降りた、久しぶりの地上。ティエリアは昨日からアレルヤが隠れ家としている部屋に滞在しているところ。
しかし、疲れた。人ごみは嫌いだし、それに今日は無駄に暑い。
それなのにこうして外出しているのは単に、今日はティエリアのものを買っているからだ。食事の材料とかならばともかく、自分の日用品を買いに行くのまで彼任せにはしたくはなかった。
ベンチの上に置かれた数々の袋には、ほとんど全てにティエリアのものが入っている。彼の部屋を自分の地上での拠点に決めたから、買いそろえようと決めたもの。
着替えや歯ブラシ、自分用のカップはアレルヤがうきうきと自分の分もセットで買っていた――おそろいだね、と嬉しそうにしながら。
そんな、これまでは何となくで済ませていたものを、自分のものとして彼の部屋に置くために、改めて二人で買いに行く。
まるで同棲する恋人みたいだね、アレルヤが言って、ティエリアは照れて怒った。
しかし考えるまでもなく、みたいではなくそのものだった。
これまでにも地上に降りた時にアレルヤの部屋に滞在したことはある。
けれど、その時は所詮は地上での一時の仮宿のつもりだった。
でも、こうして自分の物をそろえるということはそこに帰る――彼の部屋が自分の部屋になるようにも思われて、知らず身震いした。
それは、これまでティエリアが知らなかった何かだ。
帰る場所が、ある。そこは自分だけの場所ではなくて、自分以外の存在もいる場所。
それは、何だか怖いような、重いような、気がする。だからそのことは無意識に考えないようにしていたのかもしれない。けれどこうして買い物を進める内に、それは実感を伴ってくるもので。
勿論、戯れに過ぎないことだと分かっている。自分達が帰る場所は、戦場でしかないのだから。だからこそ、『普通の恋人』のような生活を一瞬でも送ることに気後れしたのだから。
それでも、やめようとは思わない。
この部屋に自分のものを置こうと思う、と改めてそう告げた時の嬉しそうなアレルヤの顔を見たから。
それに何よりも、自分がそうしたいと、思ったから。
――しかし。アレルヤはどこまで力が強いのだろうか。
自分の隣にずらりと並べられた袋の数々を見て、ティエリアは首を傾げた。
これまでに買って来た諸々の荷物は、全てアレルヤが持っていた。気付いたときにはそうなっていたのだ。途中で気付いたティエリアはさすがに自分が持つ、と主張したのだが、渡されたのは小さな袋一つきり。
『だって、ティエリア。疲れてるでしょう』
そう言われればその通り。確かに地上に降りてまだ二日目で、しかもゆうべは碌に眠れなかったのだ。
『だから、責任を持って僕がげふっ』
恥知らずめ。腹に一発入れて言葉を中断させたが、しかしそれは尤もなことだった。なので碌に眠れない原因を作り出した男には遠慮なく荷物持ちを続行させることにした、が。
それにしても、買いすぎたような気がする。あれもこれも、とアレルヤが言うから、ついでに全部彼が持っていたものだから、気付かずここまで来てしまったのだが。
しかし、おそらくティエリア一人ではこの量の荷物は持ちきれない。アレルヤだから持てるのだ、と思うと何だか少しだけ悔しかった。
――体重は、それほど違わないのだが。
アレルヤは見た目にそぐわず体重は軽い。
確かに要所要所引き締まった身体をしているが、あれだけ筋肉がついていると思えない数値だった。普通とは質が違うというのだろうか。
けれど背だって、ティエリアよりも大分高い。
ティエリアも男性として低くはないので、別にそれを羨ましいと思うわけではないのだけれど。
ただ。
いつからだろう。
隣に立つ彼を見上げることに慣れてしまったのは。
――それにしても、遅いな。
売店の様子を伺おうと、重い身体をベンチから引き剥がし、見遣ると近くの売店は全て列ができていた。これだけ暑いのだからそれは商売も繁盛することだろうが、アレルヤもまだ戻る様子がない。
むう、と顔をしかめて、けれど座り直す気にもならず、そちらを見遣りながら何気なく街路の石段に足をかけ、その上に立ってみた。
石段は、10センチはあるだろうか。
アレルヤの視界は、こんなものなのかもしれない。
そんなことを考えていると、アレルヤらしき頭が見えた。
ティエリアへ目を向けた彼は慌てて、けれど手に持った飲み物をこぼさないように慎重に走ってきて。
「ティエリア? 何してるの。暑いんじゃないの?」
「アレルヤ」
アレルヤが目の前まで来て、気付いた。
石段は10センチどころではなかったらしく、今のティエリアはアレルヤの頭より上に目の高さがあった。
いつもは見上げる彼を見下ろしている。普段は見えない旋毛も見える。変な感じだ。けれど何だか、楽しい。
石段の上に立ったままじいと彼を見ていると、無表情なティエリアの本心が伝わったかのように、アレルヤはふふ、と笑んだ。
「懐かしいなあ」
「? 何がだ」
「初めて会った頃は、ちょうどこんな感じだったじゃない、僕ら」
「……ああ、そういえば」
ソレスタルビーイングに来たばかりの頃のアレルヤは、今からは想像も付かないくらい背も低ければ身体つきも華奢な子供だった。身体能力はさすがのものだったが、あの頃からかなり見た目は変化したものだ。
一方で、ティエリアはその頃から変わっていない。だから、二人の身長差は昔は今と反対だった。ティエリアは当時はアレルヤを見下ろしていたのだ。しかしあの頃は今みたいに気にかけていたわけではなかった――卑屈な少年だとばかり思っていたから、あえて身長の差など意識していなかったけれど。
「最初、怖いお兄さんだなって思ったんだよねえ」
「悪かったな」
「……ごめん本当は綺麗なお姉さんだって思った」
「君は馬鹿か!」
「ごめんごめんってあ、飲み物こぼれるから!」
久しぶりに上から軽く拳固で殴りつけると、アレルヤは笑ってそれを避けようとする。生意気な。昔は殴られて泣いていたくせに。
そう思い出す過去を懐かしむような感傷は、ティエリアにはないのだけれど。
だから、ぽん、と軽く石段から、降りる。
「もういいの?」
「ああ。こちらの方が落ち着く」
「そっか」
言って、アレルヤはにっこり微笑んで、はい、と手に持ったコップを差し出してきた。
あの頃と同じ優しい笑顔で。
けれどあの頃とは違う9cmの距離。
けれどそれは、嫌いじゃなかった。
「俺は、今の君が好きだからな」
「……ティエリアっ?? どうしたの、暑くて熱でも出ちゃった??」
「……素直に聞いておけ、全く君は」
「え、え……僕も、好きだよ」
ずっと、君を好きだよと。
9cmの距離を縮めながら、彼はそっと囁いた。
(「ティエリアはずっと変わらないけどアレルヤはティエリアと最初に会ったときは14歳とかでまだ華奢さを残した少年だったのがいつの間にか身長伸びてティエリア追い越してあんなになった」ていうような設定が、書いたことはなかったけれど、超超超好きなもので、今回ちょっと取り入れてみましたー!)
(「あ、ティエリア」「何だ」「身長、追い越したよ」みたいな感じのが好きなんだ……!)
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