だらだら日記
基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。
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祈るように(00)
ブログ00小話10日目!
アレティエで、アレルヤのモノローグメイン。何か不思議な話です。
10日目、とキリが良いので、連続更新は今日で終わりにしたいと思います。
お付き合いいただいた方、拍手いただいた方、ありがとうございました!
祈るように
祈るように、指を組んだ。
何に祈るのかは知れないけれど。
大丈夫だとは分かっている。ティエリアがマイスターとしていかに優れているかなんて、十分に知っている。
けれど、共にミッションに挑んでいない時には、彼が無事に戻ってくるのか不安に思ってしまうことがあった。
彼が優れたパイロットであっても、実際の戦闘では何が起きるか分からない。
予想外の事態への対応能力も踏まえたうえでマイスターとして選ばれているのだと分かってはいるけれど、それでもティエリアは案外精神的に脆いところがあるものだから、だから、不安になってしまう。
彼の機体はモビルスーツとしては最高水準の防御力を持っているけれど、その代わりに挙動は機動力はない。守られても逃げ切れないことがあったら。
君が、ここに戻ってこなかったらどうしよう。
本人に言ったならば、君は馬鹿じゃないのか、と言い捨てられるような不安。戦術予報士であるスメラギのことは信頼しているけれど、ティエリアの能力も信じているけれど、それでも自分の手の届かないところで戦っていると思うと落ち着かないような気分になる。
成功を疑わない彼。
失敗を不安に思う自分。
ああ、本当に僕達は対照的だとこんなとき思う。そんなところに惹かれたのだとは思うけれど。
『――ヴァーチェ、帰艦します』
彼から入った通信が聞こえてきて、アレルヤははっと物思いから覚めた。
ミッション開始から、どれだけ時間が経ったのだろうか。時計を見ればまだ十分しか過ぎていない。
ティエリアの、いつもと変わらぬ冷静な声での報告に、ほっとする。
彼に何事も無く終わったのだと、思うと同時に胸の中の不安が別の情動に変わって湧き上がってくる。
早く君の顔を見たい。
君の声が聞きたい。
君に触れて、そこにいると分かって、そして、積もった不安を打ち消すように君が好きだと伝えたい。
手は、いまだ祈りの形のままに。
待つ。
彼が、ここに帰ってくるのを。
ただいま、と迎えるそのときを。
祈るように、待っていた。
――そんな頃もあったんだって、軽く話したらティエリアはやっぱり呆れたような顔をした。
「……君は、そんなことを考えていたのか」
「うん……君を信じていないわけじゃないけれど……僕達がしてきたことが、全て正しいことなのだとも思っていないから、だからこそ不安に感じて」
誰かの大切な人かもしれない相手の命を奪っておいて、自分の大切な人を失うのが嫌だなんて、ひどいわがままだ。
それでも、ティエリアを(仲間の誰も失いたくないと思ったけれど、彼についての不安は誰よりも強かったのだ)失いたくない、そう思うことは止められなくて。
けれど、何に祈ればいいのかも分からなくて。
後ろめたさと、不安と、落ち着かないような気持ちで。
自分でも分からないぐちゃぐちゃの気持ちで。
それを思い返しているところに、小さく、ティエリアの囁くような声が聞こえてきた。
「……全く。――――か?」
「え」
聞き取れず、聞き返すと、ティエリアは顔を伏せてもう一度繰り返した。
「僕も、同じことを考えていたとは、思わないのか?」
「……本当?」
今度ははっきりと聞こえたその言葉に、アレルヤは驚いて。
ティエリアは顔を上げて、そんな彼に目を合わせると、
「……さあ、な」
はぐらかすような、その言葉の真意をアレルヤはあえて尋ねずに、ただ、幸せそうに微笑んだ。
本当か冗談か、どちらでも構わないのだ。
今は、何を祈ることもなく。
ただ、こうして確かに彼の存在を、感じることができるのだから。