だらだら日記
基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。
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お兄さんは苦労性(00)
二期マイスターズ・当然アレティエは大前提ですが、今日はライル視点での話です。
ロックオンはいつの時代も苦労性という話(笑)
ギャグのノリなので、いつ頃の話かは気にしない方向でお願いします。
今日も拍手いただいている方ありがとうございましたー!
お兄さんは苦労性
初夏の陽気が心地良い。本当にいい天気ってやつだ。
しばらく宇宙暮らしを続けていたので、久しぶりの地上でこうも天気に恵まれると何だか気分も盛り上がる気がする。
こういう時は、ぱーっと遊びたくなるのだが。
しかし、現実はそう上手いことはいかないもので。
ライル・ディランディは待ち合わせ場所の公園に入ると、ベンチで黙々とファストフードを食べ続けている無愛想な青年を見てちょっと切なくなった。
何が悲しくて、こんなデート日和に男と待ち合わせ。とほほ。
思い切りそれを表情に出しながら「よお」と手を上げて彼に近付くと、案の定刹那からは「……ああ」という返事だけが返されて、そのまま彼は食事の続きに移ってしまう。まあ、それ以上の何を望んでいるわけでもないのでそれはそれでいいんだが。
「あんた、もっと早く食べてから来たらいいんじゃねえの」
「? 時間には間に合う」
「……そうかい」
答えるだけ答えると刹那はまた黙々と食事を続ける。そこで一旦会話は終了だ。
どうにも、自分の仲間であるところのガンダムマイスターズというのは、個性的な連中ばかり集まっていて、普通に会話を楽しむ、ということがなかなか難しかったりする。職場での円滑な人間関係を望むのは社会人として普通だと思うのだが、今の職場ではそうでもないらしい。
どこまでもマイペースな刹那にももう慣れた。しかし、話していると地味に疲れる。
……まあ、残りの二人も、二人ではあるが。
「なあ、そういやあいつらはどうしたんだ?」
「まだ来ていない」
「へえ……」
珍しい、気がする。
いや、これまでに彼らと待ち合わせをしたことはないのだが、どちらも性格は違えど、時間を守りそうな二人だ。
時間ぴったりに来た自分が最後だと踏んでいたというのに。
「何だ何だ、いちゃついてたら出かける時間過ぎていたとか、か?」
「その可能性は十分にありうるな」
「……冗談のつもりだったんだがよ」
「そうだったのか」
軽口を叩いただけなのに真面目に肯定されて、肯定されたという事実と肯定された自分の発言内容に軽く凹んで脱力したライルは、刹那の隣に腰掛けた。
ちら、とそれを見た刹那は、食べ終わったバーガーの包みを丸めると、ドリンクを一口すする。そしておもむろに、ライルに向かい直して口を開いた。
「……一つ、忠告しておく」
「ああ? 何だよ」
「普段のあの二人に、まともにツッコミを入れるのは諦めた方がいい。お前の兄もそれで胃薬を手放せなくなっていた」
「マジで?」
「……冗談だ」
と、真顔で言われても真実味が薄い。ライルは頬を引きつらせた。
「笑えねえ冗談だぜ……俺が思うに、兄さんが胃薬常習になってたとしたら、それはあんたのせいもあったんじゃねえのか?」
「? 何を言っている?」
確かにあのバカップルもバカップルだが、この男の我が道独走っぷりは、それはそれで胃が痛かったのではなかろうか。しかも5年前とか刹那はまだ16とかそこらの子供だったらしいし、あの人は長男だからか世話焼きなところがあったから。
はあ、やっぱこの仕事向いてねえかもな。
今更ながらに後悔しながら、仕事に疲れたサラリーマンの如く深い溜息を吐いていると、予定の時間から遅れること5分、見覚えのある二人が並んでこちらにやって来る姿を見て――ライルはもう一度、溜息を吐いた。
「遅くなってごめん!」
「全くだ。君のせいだぞ、アレルヤ」
「いや、あんたも遅れて来てるんだから謝れよ」
「そうか。すまない」
「……いや、まあいいんだけどよ……」
どうにも調子が狂う。いい加減慣れたが、こいつらは何かおかしい。世間ずれしていないにも程があるだろう。そこら辺にツッコミを入れる気にはならないが。
しかし、今目の前にどうにも気になることもあって。
しかし刹那もアレルヤもティエリアもそれを何とも思っていない様子で。
ライルは自分でそれを訊ねてみるよりほかなかった。
「……で、一つ聞いていいか?」
「何?」
「何で、あんたが、傘持ってやってんの」
そう、傘。アレルヤの手には一本の傘が開かれており、それは隣のティエリアに差しかけられていた。
こんな晴天にどうして、と疎い者ならば思うだろうが、今アレルヤが持っているのは雨天用のものよりも造りが華奢であり、淡いピンク色で、さりげなくレースの飾りもついている。状況を考えて日傘だろうとは予想はついた。
非常に可愛らしい、本来ならば女性が持つのが相応しいだろうそれを、男性としても体格の良いアレルヤが持っているのはなかなかにシュールな図である。ティエリアが自分で差しているならば見栄えも良いかもしれないが。それでもティエリアも男なのだが。
「あ、今日は晴れてるからちょっと不思議に見えるよね。これは日傘なんだ」
「いや、それは予想ついてるけど……何であんたが持ってやってるんだって」
「アレルヤが持つと言ったからだ」
「はあ?」
「ロックオン。聞くまでもない」
「いや、自分で持てよ」
「手が塞がるのが嫌だ」
「それに僕がティエリアに勧めたんだからね。ティエリアの肌は紫外線に弱いから、強い陽射しを浴びるとすぐに炎症になっっちゃうんです。日傘があったら少しは軽くなるかなって思って」
「しかし、初めて見るな」
「うん。昨日お店で見かけて、可愛かったから」
「アレルヤがどうしてもと言うから買ってやったんだ」
「……そうか」
いまだこの三人のノリには慣れない。基本的に自分しかツッコミがいないのも辛すぎる。アレルヤは単体ならば普通に話せる相手なのだが、ティエリアのこととなると普通の範疇から外れすぎる。ゆえにこの三人が揃うと、すごく疲れる。
この三人をまとめてリーダー的役割をこなしていたらしい兄のことを、この組織に入ってからライルは心底尊敬するようになった。とても自分には真似できない、まあ、するつもりもないのだが。
「つか、日傘ってマジであんた女」
「ロックオン?」
女みたいなことするな、とうっかり本音を言おうとしかけたライルを遮って、にっこり、笑ったのはアレルヤだった。
しかし目は笑っていない。
ティエリアのこと馬鹿にしたら、怒りますよ?
……ていうか既に怒ってるようなのだが。
慌ててライルは口を噤んだ。アレルヤの無言の圧力はまだかけ続けられている。
そんな自分の恋人の様子には気付かずティエリアは刹那とこれからの予定を打ち合わせ始めており、そもそもこんな時助けを求める相手にはならない。
ライルは、目を逸らして彼方、故郷の方を見遣った。
兄さん、俺もこの組織で……こいつらの中で上手くやっていけるでしょうか。
(当家では、基本的にロックオン(一期も二期も)は苦労性のマイスターズ唯一のツッコミキャラです)
(しかし、何でこうなった)
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