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だらだら日記

基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。

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泣いていいのよ?

昨日書きなぐっていたSS「しあわせに」「迷走」の続きです。

潔く、アレルヤがいません。この後もう一個エピソードが続きます。

ティエリア&スメラギ、フェルトの場面です。
スメラギさんがかっこよい大人の女性って感じです。
というかうちのスメラギさんはティエリアの姉(的存在)です。

結局ティエリアの部屋に運び込まれた料理の大皿は、酒瓶片手のスメラギと、フェルトと、彼女らにうるさく勧められたティエリアとで、少しずつ量を減らすことになっていた。
ティエリアは何も喋らず、フェルトもティエリアに何か言おうとしては戸惑って口を閉じてばかり、残りのスメラギは……酒の勢いでも借りなきゃやってられないとばかりに、料理と酒を交互にあおっていた。
そして料理の量が残り少なくなり、スメラギの酒瓶の中身も半分を切り、ティエリアが箸を置いたそのタイミングを見計らったように、スメラギが、グラスから口を離した。

「で、本当の所どうなのよ?」
「何がですか」

脈絡のない切り出し方。けれど今のティエリアには彼女が何を意図しているのか、分かっていた。
けれど、それに向かい合いたくなんてない。知らない素振りで置こうとした箸を持ち直した。

「いいの、これで?」
「何がと聞いています」

曖昧な問いかけを繰り返されても、鬱陶しいだけ。
核心に切り込んでこないのは彼女の優しさであるのだろうか。
そんなのは知らない。誰の優しさも、今は、いらない。
既に腹は満ちている。それでも場を誤魔化すためにティエリアは箸を動かして、

「……泣いていいのよ?」

スメラギの言葉に、動きを止めた。

「……何故、僕が泣くのですか」
「勝手に、他の女に鞍替えしてーって」
「……意味が分かりません」
「アレルヤのばかーって、ね」
「……貴女の言うことは、本当に、分からない。彼が、彼女を選んだのは、当然のことでしょう」

男と女が番う。それは、自然の理に沿ったこと。
それが、当然の、こと。
自分の瞳が深い悲しみの色に沈んでいることに気付かないで、ティエリアは淡々と、言った。

「……それでも。貴方は、泣いてもいいのよ」

その言葉に一瞬目を伏せたティエリアは、本当に泣いているように見えた。
けれど次のスメラギの言葉に、ティエリアは、すぐに顔を上げて。

「貴方も。幸せを、望んでいいのよ?」
「いいえ。私は、彼らとは違う。平凡な幸せなど、いらないのです」
「ティエリア……」

表情というものを削ぎ落としたティエリアに、フェルトが辛そうな声を出した。
それは痛々しいほどに綺麗な、人形のような顔。フェルトが初めて会った時の、ティエリア・アーデの顔だった。
付け入る隙がない、あの頃の、完璧な、冷たい存在に戻ってしまったかのように。
けれどそれを本当か疑うように、スメラギは問いを重ねた。

「本当にいらない?」
「……いりません」

ティエリアは機械的にそう、答えた。
ふうん、それを見て目を細めたスメラギは、一転、明るい声で、

「だったらアレルヤ、私が狙っちゃお」
「!?」
「スメラギさんっ!?」

これにはさすがに驚いたティエリア、とフェルトは、二人して驚愕の表情を貼り付かせてスメラギを見た。
そんな二人にスメラギは場違いなほどにおどけた口調で、

「前から可愛いと思ってたのよねえ? アレルヤも、私に懐いてくれてたみたいだし? 大人の色気でー誘惑しちゃえば、きっところっと落ちるんじゃないかと」
「だ、駄目だっ! 私がここまでして身を引いたのにそんなこと!」

言ってしまって己の失言にすぐに気付いた、が、一度吐き出した言葉は戻すことはできなかった。
ティエリアは、「あ……」呆然と、その場に立ち尽くした。
スメラギが肩を竦めて苦笑する。

「ほら、本音が出た。……やっぱり、好きなんじゃない」
「……っ何を、知ったようなことを……っ」
「ん?」
「この四年、酒にばかり溺れて、逃げ続けていた貴女に私のことをどうこう言われる筋合いなどない! 私がどんな想いかなんて、貴女などに……っ!」

そこで声を荒げてしまった自分に気付いたティエリアははっと動きを止めた。
彼女達の前で、こんな風に感情に走ってしまうなんて! 何と言う失態!
けれどそれを驚いたのはティエリアだけで、スメラギはふ、っと大人びた笑みを浮かべた。まるで、予想していたみたいに。

「ようやく、貴方らしくなったわね」

ぽん、と優しくティエリアの肩を叩いて。
ティエリアの瞳が、揺らいだ。

「大人ぶって、いい子ぶって、自分を押し殺して。そんなの貴方らしくないわ。ここには私とフェルトしかいない。恥じなくっていいわ。本当なら、貴方くらいの年の子って、失敗して後悔して反省して、それを繰り返して成長していくんだから」

それは、分かっているわよね、ティエリア。
言われないでも、ティエリアは知っている。
それが、ひと、であることを。

「しかし、僕は」

それでも、赤い瞳を伏せて、ティエリアは反問しようとした。けれど。

「何をぐずぐず言ってるのよ!」

それを遮ったのは、初めて聞く調子の声。

「……フェルト」

いつも大人しい彼女が、珍しく声を荒げていた。ティエリアの初めて見る姿、肩で息をして、眉尻を吊り上げて、眦に涙を浮かべながら、フェルトは顔を歪ませた。
憎らしいような、羨ましいような、複雑な表情で。

「好きな人がそこにいるんだから、好きだって言えばいいじゃない……っ私は、もう……」
「フェルト……」
「あ……」

自分の言ってしまったことに気付いたフェルトはそれを恥じるように頬を紅く染めた。そこを流れる涙は、止められないようだった。
そっと、スメラギはその背中に手を置いて、彼女を促すように背を押した。

「それじゃ、私達はそろそろ行きましょう、フェルト」

スメラギは持ち込んだ皿を拾い上げ、フェルトに渡すと、自分は酒瓶とグラスを抱えて背を向けた。
そして去り際、振り返って。

「貴方はもっと、足掻いても、いいのよ……?」

残されたティエリアは、ただ、呆然としていた。

(つづきます)
(すみません、一晩経ったらちょっとテンションがおかしくなってしまいました……っ)

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