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だらだら日記

基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。

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髪を結ぶ話(稲妻)

円風SS。
無自覚で鈍い感じの風丸さんと円堂さんの、タイトルどおりの話。


   髪を結ぶ話

部活動が終わり、サッカー部の部室ではわいわい着替えが始まっていた。
決して広くない部室は、10人を越える部員が一斉に着替えをするにはかなりいっぱいいっぱいである。だから自然と、片付け当番になっていなかったりで早く上がれる者から速やかに着替えを済ませていくようになっていた。

「あ、キャプテン、お疲れ様です!」
「おー、みんな、おつかれー!」

今日も最後まで残って特訓していた円堂が、それに付き合っていた風丸達と一緒に部室に戻ると、既に他の皆は大体着替えを終えるところだった。
既に制服姿になって何やら話に花を咲かせていた何人かは、場所を空けるために外に出て行く。
そしてできた空間に、風丸も自分の制服を引き寄せた。ユニフォームを脱いで制服のシャツを羽織ると、ふと気付いたように髪の結び目に手をやってオレンジのゴムを外し、結んでいた髪を一旦下ろした。
はらり、重力に従いながらも、下ろした髪は一部が跳ねて踊っている。元々癖っ毛なのと、運動をして乱れたのと、両方のせいだ。
いつも頭の高い位置で束ねている髪は下ろすと背中の中ごろまでの長さで、男子中学生としてはいささか長い髪は油断していると一瞬女子かと思ってどきりとしてしまう。まして女顔の風丸だから、尚更に。
とはいえそれを指摘するような、あまつさえからかおうと思うような者はここにはいないのであったが。

そんな風丸を見て、隣でグローブを脱いでいた円堂がふと気付いたように、何だか楽しそうに口を開いた。

「風丸、髪触らせて、じゃなかった、オレが髪結んでやるよ!」
「え?」

その突然の円堂の言葉に、風丸は、きょとん、と目を瞬かせた。
そしてすぐに、仕方ない奴だな、という苦笑を浮かべる。

「お前、髪とか結んだりできるのか?」
「やったことはないけどさーでもいつも風丸が結ぶの見てるし、できる!」
「それに、そんなことしても別に面白くもないと思うぜ?」
「いいから! あ、それじゃオレ手洗ってくる!」

言うや早く、円堂は部室から外に出て、そのまま水道へと走っていったらしい。

「そんなの別に気にしなくていいのに……って、あれ、皆は?」

円堂を見送り改めて振り返ると、部室に残っていた部員達はそそくさと着替えを済ませ、いつもはしばらく部室でだべっていくような一年生も足早に出て行っていた。
残っているのは一緒に戻ってきた豪炎寺と鬼道、ただし両者ともとっとと着替えを済ませて、バッグを肩にかけて帰る準備が完了している。

「それでは、オレ達は先に雷雷軒に行っているぞ」
「? オレ達もすぐに着替えるから一緒に行かないか?」
「いや。先に行っておく」
「待っても来なかったら勝手にやっているから、こっちのことは気にせずにゆっくり来ればいい」
「あ、おい、ちょっと……」

てきぱき、やけに息の合った様子で二人が出て行ってしまうと、残されたのは風丸一人で。
首を傾げながらも、途中になっていた着替えを再開した。
先に出た二人の間で、

(あの二人の空気に当てられるなど冗談じゃない)
(ああ全くだ)

そんな会話が密やかに交わされていたことなど、露知らず。



結局円堂が戻ってきたときには、部室には着替えを済ませた風丸だけが残っていた。

「あれ? 皆帰っちゃったのか?」
「ああ。鬼道達もとっとと出て行ったぞ。オレ達も早く行こうぜ」

まあ、鬼道にはゆっくり来ていいって言われたけど。そう言うと、円堂はあっさり納得したようだった。

「それじゃ、風丸そこ座って」
「ああ、そうだった、な」

一応髪は結び直さずに待っていたけど、こう改めて、となると何だか気恥ずかしい。
それでも近くの椅子に座ると、その背後に円堂が立った。

「それじゃ、いくぞ」
「そんなに意気込むことかよ」
「へへっ」

そしていたずらっ子のような笑い声と共に、円堂の手が頭に触れてきた。
触れられて、最初、びくり、と反応してしまった。
ふわり、と髪に触れられて。
柔らかく、持ち上げられて。
その感触を楽しむようにゆっくりと毛先までを梳かれて。
何とも言えないくすぐったいような、むずがゆいような、そんな感覚が何だか恥ずかしくて。
風丸は後ろに向けてたしなめる声を出した。

「こら。遊んでないで早く結べって。鬼道達が待ってるだろ」
「あ、そうだったな」

言えばようやく本格的に、ぎこちなくも髪をまとめていくのが分かる。
要領を得ない、さっきまでと違う少し乱暴な手の動きに何だかほっとしつつ、ええと、とか小さく呟く声が聞こえては思わず笑ってしまう。

「円堂、櫛もなくてやりづらくないか?」
「風丸だっていつも櫛とか使ってないじゃん」
「まあ、慣れてるから」
「じゃあ、オレもできる。にしても、随分伸びたよなあ」
「……ああ、そうだな」

風丸だって昔からこの髪型だったわけではない。短い時期もあった。
けれどそれが少しずつ伸びていくのを、円堂はずっと隣で見てきた。
毎日のように会っていたから、少しの変化には気付けなかったけれど。はじめは結べない長さだったのが、やがて肩にかかって邪魔になって、首筋に沿って結んでいたのが、結ぶ位置も高くなっていって。
そんな変化を、ずっと見ながら、ずっと触ってみたいと思っていた。
髪を触ってみたい、なんて他の誰かには思ったことはない。風丸だから、だと思う。
特に、風丸が同じグラウンドを走るようになって、その後ろ姿をゴールから見るようになってから、気付くようになった欲求。

「風丸の髪ってさ、走ると風に揺れて、その動きについつい見とれちまうんだよなー」
「猫じゃらしに反応する猫か、お前は」
「うーん、そっかも。だってすっげー綺麗に見えるからさ」
「…………えん、ど」
「ほい、できた」
「あ、ああ……さんきゅ」

一瞬、風丸が言葉に詰まっている間に円堂はぱっと手を離した。
慌てて手を回してみると、後ろ髪は不器用な形で結ばれているのが分かって、けれどそんなのは予想済みだった風丸は、小さく肩を竦めた。
けれど、その後ろから見える頬は、ちょっと赤く染まっていて。
そんな風丸からは見えないことをいいことに、こっそりと、髪の先にキスして。

「……へへ」
「? 何だよ、円堂」
「何でもない!」

それより早く帰ろうぜ!
さっさと着替え始めた円堂を、風丸は不思議そうに眺めていた。

(とりあえず、無自覚風丸さんが円堂さんを甘やかす話でした)
(ちなみに実際の運動部はもっとずっとかなり上下関係厳しいと思うのですが、雷門中はそんなに厳しくないかなーと思ったのでこんな感じです)

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