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だらだら日記

基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。

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冬の日の話(稲妻)

そろそろ小説の書き方を忘れてきそうなので、ちょっと小話走り書きしてみる。本当に走り書き、ですよー。

豪鬼です。本当にただの短い話です。
それにしても最近本当に寒くなってきましたよねー。そんな話。

へくしっ。
小さなくしゃみが聞こえて、振り向いてみれば肩を強張らせた鬼道の後姿がそこにあった。
咄嗟に噛み殺そうとしたが、それでも堪えきれずに漏れてしまった、そんな感じのくしゃみ。それが返って間が抜けて可愛らしい響きになっていることに多分本人は気付いていない。
しかも本能的に暖を求めてか、指先が微かに動き、その身に纏うマントを引き寄せた。大きな布地で身を隠そうとするようなその仕種には、どこか、くしゃみの後の無防備さが窺えて、稚くも愛らしいもので。それは普段の凛々しさとのギャップを生み出して、豪炎寺の心にもう何度目かのゴールを決めていくものであった。
とは言え、それに萌えていたのは一瞬のこと。マントに覆われた彼の肩が小さく震えているのを目に留めた豪炎寺は、軽く眉根を顰めた。
今日の空の色よりもずっと青いそれは、夏には涼感を感じさせることもあったけれど、今は逆に寒々しさを覚えてしまう。
とは言えしっかりした布地で作られたそれは実際には夏は暑くて動き辛く、今の季節にこそ格好の風除けになってよいのかもしれないけれど、とはいえ動きに合わせて揺れ動いては万全の備えとは言うことはできまい。吹きさらしのこの広場では、尚更に。
部活は休みだけど、一緒に特訓しよう――そう言い出した円堂はまだ来ていない。どうせ昨日も夜まで特訓していたのだろう、もうしばらくしたら連絡を入れるとして、先に揃った二人で始めてしまおうかと、そんな会話を交わした矢先の、さっきのくしゃみだった。

「鬼道、」

声をかけると、鬼道ははっとしたように、かきよせていたマントから指を離した。ふわり、青い布が元どおりに広がり、さっきまでの寒がりようなど嘘だったかのようにしゃきっとこちらを振り返る。

「何だ、豪炎寺」

振り向いた鬼道は、何事もなかったかのように声を張って答えてくる。喉に痰が絡まるのか、少し話し辛そうに聞こえた。
ゴーグル越しでは、その表情は読みきれない。それでも、眉間の皺はいつもよりも深く見えるし、何よりも頬に血の気がない。きっと指先も冷え切ってしまっているのではないだろうか、ぎゅっと握り締められた拳に思う。
今朝のテレビが言っていた。今日は今年一番の冷え込みです。豪炎寺自身もそれは肌に実感していた。確かに今日は吐く息が真っ白になって見えるし、頬を切る風の冷たさを辛い、とも感じていた。寒がり、という言葉とは縁のない豪炎寺でもそうなのだ、鬼道にしてみればもっと寒さを感じているのかもしれない。
だが、動き回るのに、そんなに厚着はしていられない。動き始めてしまえばすぐに暑くなるだろうと、言ってみればそうなのだけれども、それでも寒そうな鬼道を前にして、自然と豪炎寺の身体は動いていた。
暖めたい、と。
そんな思いからその背中を、マントごと包み込むように抱き締めると、鬼道の体が驚きに跳ねた。

「な、何を」
「風邪、引くといけないから。こうしてれば暖かいだろう?」
「す、すぐに離れろ! 変に思われるだろうが!」
「誰にだ?」

どうせ、円堂以外は来ないだろう。豪炎寺が指摘すれば、鬼道はぐっと悔しそうに呻いた。
豪炎寺の言うとおり、周りには誰もいない。円堂の定番の特訓ポイントは、近くに鉄塔があるだけで他にはとりたてて何もない。町中を見渡せる鉄塔だけれども、こんな寒い日にわざわざ上りにやってくる物好きもいないらしい。いるのはせいぜいカラス位だ。
とは言え、それではい分かりました、となるわけもなく。

「円堂が来るだろう」
「なら、それまででいい。こうしていてくれ」
「しかし」
「……それに、オレも寒いんだ」

だから、こうしてくっついていたいんだ。
自分が与えることを拒みきれず。与えられる人の温もりを拒みきれないことを分かっていて、用意した言い訳。
言って、ぎゅうっと抱き締める腕に力を入れれば、それを正当な口実とばかりに抱き締めた背中は思ったよりも小さくて、微かに震えていた。
円堂が来たら、階段を上ってくる足音で分かるから、それまで、と。もう一つ、言い訳を用意しながら、冷えた身体を抱き締める。
それにはもう、言葉は返って来なくって。ただその無言が、彼の答えを伝えてくるものだった。



抱き締めた身体。飛び出しそうになる心臓の音。静まれ、静まれ。思うそれは我がものか彼のものか。
それは、聞き慣れた足音が聞こえてくるまでの少しの時間。ずっと続けばよいと思った、短い時間。
そんな冬の、ある寒い日の話。
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