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だらだら日記

基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。

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今だから言える言葉(稲妻)

何かいきなりエイプリルフールネタで書きたくなったからさ……!

両想い以前の、豪鬼……と呼べるかどうかも怪しい段階の話です。
豪炎寺さんと鬼道さんがくっつく前の話?とでも言いますか。
これまで書いてきたのとはまたちょっと違う感じにしてみました。
本当に勢い任せの小話です。おかしなところはごめんなさい。

「豪炎寺、好きだ」

鬼道が突然告げてきた言葉に、豪炎寺は目を見開いた。


   今だから言える言葉


春休みの最中、桜の蕾も綻び始める頃。
春の嵐とも呼ぶべき強風に見舞われた今日は、サッカー部の練習は午前中だけだった。
そうなると、いつもならば円堂が物足りないから特訓しようぜと言い出すところ。しかし今日はそんなこともなく、円堂は解散後そのまま帰宅し、他の部員たちもそれに倣えと相成った。豪炎寺も、鬼道もそれに続く。
そして豪炎寺は家に帰ると荷物をまとめて、そして再び外に出た。途中円堂と合流すると、二人一緒に鬼道の家を訪ねていた。
今日は二人とも鬼道家に泊まるという約束をしていた。
目的は、鬼道家に大量にある海外の試合の録画を見ること。普段はなかなか見る機会のない過去の選手のスーパープレーや、日本では放映されないような試合のDVDも、鬼道の家には揃っていた。
白熱した試合に目を凝らし、そしてホイッスルが鳴るところまで見た後は口々に、あそこがよかっただのあの動きはどうだっただの、夢中で感想や意見を述べ合う。
それを何回か繰り返している間に時計の針はもう11時を過ぎており、明日も練習がある身としては寝なくてはいけない時間となった。
昼に鬼道家に着いてからずっと試合のDVDを見るのに夢中で、夕食もテレビ画面にかじりつきながら簡単なもので済ませてしまった。風呂に入ることも忘れて熱中してしまったが、今日の午前は練習があったし、シャワー位は済ませてさっぱりしてから寝たい。
家主である鬼道は最後でいい、と言うので豪炎寺と円堂とでじゃんけんをして、豪炎寺が一番目、円堂が二番目、とシャワーを借りることになった。



豪炎寺がシャワーを済ませ部屋に戻った時には、円堂はソファでクッションを抱えながら舟を漕いでおり、鬼道は食べ散らかした食糧のごみを片付けていた。
悪いな、と鬼道に言いながらソファに歩み寄っていく。いつもならばきっともうぐっすり眠っている時間なのだろう、近づいても目を開けない円堂の横に屈み込んで、そっと肩を揺すりながら問いかける。

「円堂、シャワーはどうする?」

聞くと円堂は眠そうに目を擦りながらも起き上がった。「しゃわー……」とむにゃむにゃ言うと、そのままふらふら部屋から出て行ってしまう。
何度か泊まりに来たことがあるし大丈夫だとは思うが心配になった鬼道はその後を追い、豪炎寺は手持無沙汰にソファに腰かけて、近くにあるサッカー雑誌を取り上げた。
少しくたびれたそれは、さっき見ていた試合の解説が書いてある数年前の雑誌だった。どこか的外れだよな、そんなことを話した記事を改めて目で追い、さっきは見なかった別のページを読み進めていると、鬼道が部屋に戻ってきた。

「豪炎寺。お前はまだ眠くないのか?」
「ああ、まあな。円堂は大丈夫だったか?」
「ああ。歩いてるうちに目が覚めてきたみたいだな。どうやらちょっと寝たから体力が戻ってきたようだった」
「それならいいんだが」
「よくない。素直に寝付かず、もう一試合見ようとか言いだしそうなテンションだったな、あれは」

はあ、と困ったように言いながら鬼道は豪炎寺の隣に腰かける。「何を読んでいるんだ?」問われて手に持った雑誌を渡せば、それを覗き込んできた。

(……ゴーグル、外せばいいのに)

彼の横顔を見て、豪炎寺は心でそう呟いた。
どうせ豪炎寺と円堂しかいないのに、それでも鬼道はゴーグルをつけ続けている。シャワーを浴びて、寝る前にはもう外すのだろうに。それなのにこうして今はまだつけ続けているその意味は何なのだろうか。

(鬼道の目、見てみたいんだけどな)

豪炎寺は、鬼道の目が好きだった。綺麗な紅い瞳。深い色合いのそれは宝石のようで、ずっと見つめていたくなる。それに、いつもは隠されているからこその特別感が、胸をくすぐるものだった。
その目に見つめられると、何だかどきどきする。笑みを浮かべた時なんかは、本当に優しい表情になるのだと、そのことを知ってからゴーグルで隠すことを惜しく思っていた。

(あんなに綺麗なのに、な)

「……あまりそういうことを口に出すな、豪炎寺」

思ってじいっと横顔を見ていると、困ったように鬼道が口を曲げた。
その指摘に豪炎寺はきょとんと首を傾げ、はっとしたように口を塞ぐ。

「……オレ、何か言っていたか?」
「ダダ漏れだ。気付いていなかったのか?」

気付いていなかった。知らず、恥ずかしいことをつらつらひとりごちていたのだ。それが聞こえていたらしい鬼道は、居心地悪そうに少し頬を赤らめていた。

「やっぱりお前、眠いんだ。そうだろう」
「ああ、そうなのかもな……」

ちら、と鬼道が時計に目をやった。豪炎寺もそれを何となく追いかけて、ああ、もうすぐ12時になるのか、道理で眠いはずだなんてことをぼんやり思う。

「……でも、本当のことだぞ」
「何が」
「鬼道の目は綺麗だってこと」
「……本気で、言っているのか?」

ああ、と頷くと鬼道は困ったように俯いた。豪炎寺とて、友人相手に大分恥ずかしいことを言っている自覚はあるが、どうせ一度口に出してしまったことだし、それならばちゃんと言っておきたい気がしたのだ。

「お前は、……全く、タチが悪いな」
「そうか?」
「嘘じゃないところが余計、タチが悪い」

そう言われても、そういうことは自分では分からない。
はて、と首を傾げていると、そんな様に鬼道は微笑んで、もう一度、時計を気にする素振りを見せた。
そして、まるで何かの覚悟を決めるみたいに、大きく溜息を吐く。
その直後。鬼道は告げてきたのだ。

――「豪炎寺、好きだ」、と。



告げられた豪炎寺は、一瞬頭がフリーズした。固まったまま、目の前の鬼道の顔を見返す。
その目はゴーグルに隠れていて、その真意が見えづらい。だからこそ余計に混乱する。
好きだ、と。確かに鬼道は、自分に言ったのか。
勿論豪炎寺も鬼道が好きだ。サッカーを愛する仲間として、親しき友として。
けれど、それは今、あえて告げることだろうか。
それよりも。今鬼道が向けてくる感情は、向けてくる眼差しは、それとは違うように思えて。
その声はもっと熱く、切ない響きだったように聞こえて。
それに対して、自分でも何と言おうとしたのかは知れない。それでも、豪炎寺が何か言おうと口を開きかけたところ。

「……ふっ。豪炎寺、今日が何の日だったか知っているか?」

苦笑した鬼道の方が、先にそんなことを言ってきた。

「え……」

何の日か? 混乱している頭はわけがわからないままに、素直にその問いの答えを探すために巡り始める。

「えっと、4月1日……っエイプリルフールか!」
「……まあ、そういうことだ」

種明かしされた豪炎寺は、一気に脱力した。それを見て笑いながら肩を竦めてくる鬼道の眉根は、すまなそうに皺寄せられている。
まさか自分が気付かず真に受けるとは思わなかったのだろう、しかしこちらもまさか鬼道がエイプリルフールに乗じた嘘を吐いてくるとは思ってもいなかった。
少し恨めし気に彼を見ると、悪いな、と短い謝罪の言葉。
そして鬼道は立ち上がると、床に落ちた雑誌を拾い上げた。驚いた拍子に床に落としてしまっていたらしいそれを、豪炎寺は空返事をしながら受け取った。

「ただいまー」

その時、折しも円堂が戻ってきた。シャワーを浴びてさっぱりした笑顔で、さっきよりも大分元気そうに見える。

「円堂。もういいのか?」
「ん、さっぱりしたー! 何か眠くなくなったからもう一試合」
「オレが出たら寝るぞ」
「……ちぇ」
「円堂?」
「はーい」

窘めるように口をとがらすと、円堂は素直に返事をする。
それを見て取った鬼道は彼と入れ替わりに、シャワーを浴びに部屋を出ていった。
それを何気なく見送った豪炎寺が雑誌の目を落としていると、円堂が隣に座りながら、あれ、と意外そうな声を上げて。

「どうしたんだ、豪炎寺」
「……何がだ?」
「何って、その雑誌、逆さま」
「!」

円堂の指摘で初めて気付いた。どうやらさっきの嘘に動揺してしまったいたらしい。誌面を見ていても目に入ってきていなかった。
何気ない風を装って雑誌の向きを変えながら、そういえば、と円堂に訊ねかけた。

「円堂、今日が何の日か分かるか?」
「んー、エイプリルフールだっけ」
「……らしいな」
「部活ん時さ、一回だまされて、それで気付いたんだけどなー」

ああ、気付いていなかったのは自分だけか。それだけサッカーのことで頭がいっぱいだったのだが、そのおかげでいらぬ動揺をしてしまった。それにしたってまさか鬼道がエイプリルフールの嘘を吐いてくるとは思わなかったのだ。

「あ、でも」

言って円堂は壁際の時計を見た。
そこにある時計の針はさっきから少し進んで、両方ともにもうすぐ12を指すところ。もう、日付が変わってエイプリルフールではなくなる。

「んー……??」
「どうした、円堂?」
「いや、さ……」

円堂が首を傾げていたかと思うと、思いついたように自分の鞄を漁り出した。
目的のものがなかなか見つからないのか、ぐちゃぐちゃと中身をかき混ぜて、ようやく取り出したのは携帯電話。
折り畳み式のそれをぱかっと開くと、円堂は「あ、やっぱり」と声を上げて。

「何だ、鬼道、まだ時計直してないんじゃん」
「……え」
「あれ、あん時豪炎寺いなかったっけ? この部屋の時計、ちょっと遅れてるんだ。もう古いからすぐ遅れるんだって。こないだ来た時に言ってたんだけど、鬼道、まだ直してなかったんだなー」

だから、もうとっくに12時を回ってるんだよ、と。
言われて豪炎寺も自分の携帯を確かめる。12時5分。部屋の時計とはおよそ、5分のずれがあった。

「だから、本当はもうエイプリルフールじゃないんだなー」
「……ああ、そうだな」

エイプリルフールじゃない。ならば、もう嘘を吐かれることもない。
そんなことを思い浮かべながら、はっと気付く。
あの時鬼道は時計を確認した。確認して、そのうえで口を開いた。
――あの時、長針はどの角度にあった?
確か、自分の記憶違いでなければ、11を少し過ぎていたような気がする。
それならば、エイプリルフールはもう過ぎていた?
それとも、鬼道は忘れていたのだろうか、この部屋の時計が遅れていることを――それは、とても彼らしくない、気がする。

エイプリルフール。
それで打ち消されたはずの言葉は――本当に嘘なのか。
どこまでが嘘で、どこまでが本当?

「あ、鬼道、おかえりー」

円堂の声にどきりと驚いて、豪炎寺は顔を上げた。
そこにはシャワー帰りの、髪を下ろした鬼道がいる。
勿論、ゴーグルは外して。綺麗な紅い瞳を外に出して。
その目が、驚きの表情を浮かべる豪炎寺を見るなり、あ、と見開かれる。それは、何だか気まずそうに。
湯上りで血色の良かった顔が、更に赤く染まるのを見て、豪炎寺の中の疑問符はすぐに確信へと変わっていき。

けれどその胸に芽生えた甘酸っぱい感情の名前に、気付くまでには、もう少し。



(豪炎寺から告白する話は以前書いたので、今回は鬼道さんから告白する話にしたかったのですが、結構に難しかったようです……わあい)
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