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だらだら日記

基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。

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幻水小話。その2

本日二つ目の幻水小話。
今度は幻水5で王ロイ。もしくはロイ王。
久しぶりに書くと加減が難しいっていう話です(おい)。

   なみだはみないで

「どーしたんだ、王子さん?」
「っ!」
珍しく一人きりで屋上にいた奴に何となく声をかけたら、飛び跳ねるんじゃないかってくらい驚かれた、のに、俺は驚いた。
いくら後ろ向いてたからって、こいつ位になると俺が近付いた気配、ちゃんと分かっていたはずなのに。一体何を呆けていたのやら。
訝しく思って近付いてみると、王子さんは顔を隠しながら後退する、が、屋上の一番端に突き当たってそこから動けなくなっていた。
「っ……」
「! もしかして、泣いてた、のか?」
数歩近付いて顔を覗き込むと頬に涙の跡が見えた。その意外な事実に、俺の口からはそんな言葉が思わず出てしまった。
「ち、違うよ。これは、ええと、汗!」
そう言う声が、その内容を裏切って思い切り涙声だった。
ここまであからさまに下手な嘘を吐くなんて、どれだけ動揺しているのだか。
王子さんは表情が豊かな方だけど、それでも泣き顔を見たことは、なかった。
これは、余程のことがあったのかもしれない。
けれどこいつが強がって主張してくるんだから、これ以上、俺が踏み入ることじゃ、ない。
「……そっか。悪ぃな。俺、行くわ」
そう思った俺がそのまま回れ右をしたのは大人しく一人きりにしてやろう、そんな気遣いだったんだが。
「っ!」
「ぐえっ」
後ろ髪を引かれて――この場合、そのままの意味だ――、俺は首をのけぞらせてその場に立ち止まらせられた。
「なっ何しやがるっ」
「ごめん」
「手離せ!」
「ごめん……」
「王子さ……っ」
それ以上の言葉は、後ろから抱き締めてくる温もりに、遮られた。いつものふざけた様子じゃなくて、縋りつくような手に引きとめられて、俺は肩口の銀色の頭を見下ろした。
「……やっぱ、泣いてたのか?」
「ううん」
「じゃ、俺、行ってもいいか?」
「ううん」
「……あのなあ」
「泣いてない、けど、今は、ちょっとだけ」
傍にいて。
鼻をすすりながらそう言われたら、これを見捨てていくのは人でなしの所業に思えてしまう。
仕方ねえ。
肩を落とすと、自分の髪をかき上げながら俺は俯いた。
「あー……ちっとだけだかんな」
「……ありがと」
そう言いながら、すん、と鼻をすする王子さんの『汗』がスカーフに染み込んでいくのを、そのまま俺は甘んじて受け入れた。
こんな風に抱きつかれるのに最近は慣れたとは言え、いつもならば絶対振り払ってやるのに。
(……いつも明るいあんただから。そんな顔されると調子が狂うんだよ)
「……一人で泣いてんじゃねえよ」
「泣いて、ない」
「あーそうかい」
「……」
ありがとうね、ロイ。
そう小さく聞こえた言葉は、嫌なものではなかった。

そのまま、誰も来ない屋上で、王子さんに抱きつかれたままの俺だったが。
いつのまにやらいつもの調子を取り戻した奴がキスしてきやがったのを機にその腕を振り払ってそのまま逃げ出したのは少しだけ後の話ってやつだ。

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