だらだら日記
基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。
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おめでとう。
ということで。
ティエリア誕生日おめでとう小話。
アレティエです。
(これは、いつかどこかでのお話。)
おめでとう。
「ん……」
夜中、枕元に人の気配を感じたティエリアは、小さく身動ぎした。けれど飛び起きるような真似はしない。相手は警戒せずともいい、信頼を置いている彼なのだということは、その気配が部屋の前に来たときから分かっていた。それに、そもそもここは彼の部屋なのだ。
けれどそのまま眠りに戻ることはせず、眠気を追いやろうと顔を顰めていると、その肩に毛布をかけ直していたその気配の主がその手を止めた。けれどティエリアは自分から手を伸ばしてその腕を掴み寄せ、それを頼りに身体を起こす。
「アレルヤ、」
そして恋人の名を呼びかけると、苦笑する気配。それと共にそっと身体を支えるように腕を回される。
それを甘受しながら壁際を探り、部屋の灯りをつけると、すまなそうなアレルヤの顔がぼやけた視界に映ってきた。
「……起こしちゃった?」
「気にすることはない。ここは君の部屋だ」
勝手に自分が入って、アレルヤが戻ってくるのを待っていただけだ、と嘯くティエリアの声はまだ眠りの余韻もあってどこかぼんやりしたものだった。
「ごめんね、よく寝ていたのに」
「謝ることはないと言っている」
「うん……それじゃ、」
危うくもう一度謝りかけたアレルヤは、けれど気を取り直して、別の言葉を口にする。
「おめでとう」
アレルヤが幸せそうに口にしたその言葉に、ティエリアはきょとんとした顔で瞬きを繰り返した。
そんな表情をやっぱり、とでも言いたそうな顔で見たアレルヤは、寝乱れた彼の髪をそっと梳きながら、もう一度口を開いて、
「誕生日、おめでとう」
「…………ああ。そういえば」
「だろうな、って思ってたよ」
「うるさい。自分がいつ生まれようと僕にとっては大して意味はない」
「僕にとっては、意味があるんだよ?」
「……分かっている」
ティエリアの誕生日を彼が知ってから、毎年のようにさんざ祝われてきているのだ。
それに自分にだってアレルヤの誕生日を祝う気持ちはある。
ただ、自分の『誕生日』など自分にとって大した意味はない、それだけだ。
むしろ、近頃では寂しくすら思う。
いくら年を重ねようとも、ティエリアは老いることなく。
その差は、アレルヤと離れていくばかりで。
それは、とうに分かっていたこと。ソレスタルビーイングに入ってきたばかりの頃の小さかったアレルヤが、気付けばティエリアの背を追い越して、大人の男として年々年を重ねていくことは。
けれどそれを強く思い知らされる日、それがこの誕生日と言うやつだった。
それを口に出したことはない。
けれど、多分彼も同じ思いを抱いている。
その上でアレルヤは、ゆっくりと、優しい声で言葉を紡ぎだしてきた――毎年のように繰り返している言葉を、本当に嬉しそうに。
「君が生まれてきたから、僕は君に会えた。好きになることができた。君を好きになって、こんなに幸せな気持ちになれた。それだけで、十分。だから……ありがとう」
「どうして君が礼を言う。言うべきは、僕の方ではないか」
「……うん。おめでとう、ティエリア」
「ありがとう、……アレルヤ」
言うとティエリアは彼の背に手を回した。肩口に顔を埋め、自分を包む体温を感じる。
プレゼントなんて、何もいらない。
ただ、こうして彼と共に在れる時間が、何よりも誕生日祝い。
そう思って、温かく、幸せな気持ちだけをただ、噛み締めながら。
愛する人を、その腕の中に感じながら。