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だらだら日記

基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。

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取り戻したものと、失ったものと(稲妻GO)

イナクロ5話を見ての走り書き小話。あの優一さん絡みのワンシーンから。
天馬と京介。ちょっと天京っぽい。感傷的な話です。

一時の感情任せの走り書きなので荒い部分はすみません。
あと、前の話を確認せずに書いている部分もあるので、勝手に設定改変していたり、おかしな表現があったら適宜修正を入れていきます……。
とにかく、視聴から時間が経たない内に書いておきたかった話でした。





「天馬。お前は、一体何を隠しているんだ」

いつも以上に鋭い視線と、逃げを許さない強い声で語りかけられた天馬は、ぎくり、と身が強張るのを隠すことが出来なかった。


   取り戻したものと、失ったものと


さりげなく視線を彷徨わせるが、周りには他の仲間の姿はなく、逃げどころも見当たらない。
いつも賑やかな皆と一緒だから珍しいことだけれど、おそらく剣城はこの時を狙って作ったのだろう。今、この場には二人だけしかいない。
そして険しい顔つきのまま、剣城は天馬へと詰め寄ってくる。少し腰が引けながら、天馬は努めて笑顔を形作ろうとして、失敗した。

「お前やフェイだけが知っていることがあるんだろ」
「な、何って……パラレルワールドの話、剣城も聞いていただろ?」
「違う。それだけじゃない。オレに、話していないことがあるだろう」
「えー、何のこと……」
「兄さんのことだ」
「優一さん、の……」

剣城の追及に答える声が、些か力ないものになる。
天馬とて分かっている。元々は自分の失言がいけないのだ。
そう、全てはさりげないあの一言。フェイが助け舟を出してくれたため、あの時は追及を逃れることが出来たけれど、今はフェイはいない。
二人きり。他に助けはなく、剣城を誤魔化しきれるかどうか、こればかりはなんとかなるさ、と楽観的にも言っていられない状況だった。

天馬の体感時間で言えば、数日前。
未来からの介入を受け、インタラプトへの干渉がなされた世界で、天馬は剣城優一と共にサッカーをした。
彼は、天馬の知る剣城優一ではなかった。天馬が知る彼は脚に大怪我を負い、長く車椅子での生活を続けていた。それでも辛いリハビリを乗り越え、ようやく手術を受けて歩くことができるようになったばかりのはずで。
けれど、天馬が会った彼は怪我を負うこともなく、ずっとサッカーを続けてきたパラレルワールドの「剣城優一」。
優一は、この世界を本来そうであるべき姿に――天馬が知る世界へと戻すために天馬たちに力を貸し、そして、消えた。
インタラプトの改変を阻止した世界は、天馬が知る本来の世界に戻り。
あの、闊達にフィールドを駆けた剣城優一のことは、ほとんどの者は忘れ去り、天馬のほかに知る者は僅かしかいない。
そして剣城京介もまた、忘れてしまっている――いや、元からそんな事実はなかった、という、正しい記憶のみを保持しているはずだ。
本当ならば、そのままにしておきたかった。けれど、自分が「優一さんと一緒に戦った」ことを、うかつにも口に出してしまい――それを剣城が聞き逃すわけがなかったのだ。

「兄さんと一緒に戦ったって、一体どういうことなんだ」
「な、何のことかな? オレ、そんなこと言った?」
「ああ。その口で、はっきりと。オレが、聞き違えるわけがないんだ」

はい分かってます。サッカーをしている時のクレバーさもさることながら、普段から剣城は人をよく見ている。観察眼が鋭く、隠れた人の真意を見抜くことも多い彼を前にして、とぼけた答えを返すしかない今の状況に胃が痛くなってきた。
そもそも嘘を吐くのは得意じゃないし、好きでもない。まして、大切な仲間である彼に対して隠し事をするなんて。
それでも、これは、言えない。言っちゃいけないことなんだ。だから、必死に口を噤む天馬に、しかし剣城は追及の手を緩めてはくれなかった。

「後で説明するとか言っておいて、どさくさ紛れに誤魔化そうってんじゃないだろうな」
「う」

またしても、ぎくっとしてしまう。実際問題自分自身忘れかけていたということもあるが、剣城も忘れてしまってくれないかな、と思っていたところもあるのだ。そんな楽観的観測は、脆くも崩れてしまったのだが。
そしてそんな天馬の反応に、剣城は少しだけ呆れたように眉を上げ、しかしすぐに険しい表情に戻ってしまう。

「……パラレルワールド」
「え、剣城、なに」
「兄さんが、怪我をしないでサッカーを続けている世界が、あったんだろ」
「え、そ、それは」
「……そしてその世界の兄さんと、お前はサッカーをした。そうなんだな」

逃げることを許さぬ眼光で見据えられて、天馬は丹田に力を込めた。そうしないと気圧されて、みっともないところを見せてしまう気がした。
そうじゃない。今は、自分が動揺している場合じゃないんだ。
こうなることを、予想していた。だから、避けていた。けれど、知ってしまった剣城がどう考えるかなんて、そんなの、分かりきっている。

「……分かった。説明するよ」

困りきって、いよいよ覚悟を決めるように、ふう、と深く息を吐く。普段はどちらかと言うと直感的にしゃべってしまう天馬だけれども、今は深呼吸をしながら、ゆっくり、口に出すべき言葉を探っていた。けれどそんなことには慣れていなくて、上手い言葉なんて、簡単には思いつかないもので。だからこそ、正直に、真っ直ぐな気持ちで再び口を開いた。

「初めに言っておくけど。オレは、剣城とサッカーが一緒に出来て、嬉しい。すごく嬉しいし、楽しいんだ。それは、優一さんもそうなんだって、そう言ってた。京介がサッカーをしているところを見られるのが嬉しいんだって」
「――それで、何が言いたい」
「この間も言ったけど、この世界は未来からインタラプトへの干渉があって、過去が変えられてたんだ。オレは、サッカー部の皆がサッカーなんて知らないって言う世界も見た。そもそもサッカー部がなかった世界を見てきた。それでも、フェイやワンダバが助けてくれて、それで、ようやく雷門サッカー部が元通りになって。オレの知っているサッカー部になって……それは、優一さんのおかげでも、あって」

そこで、一呼吸。覚悟を固めるために深く息を吸って、ぎゅっと、拳を握り締める。剣城も、自分が言いたいことは大体分かっているのだろう。ならば、ならば、だ。自分がちゃんと、彼へ伝えないといけない。

「優一さんは――パラレルワールドの優一さんは、怪我をしなかった。事故自体がなかったことになっていたんだ。そして優一さんは今のこの世界を取り戻すために、一緒にプロトコルオメガと戦ってくれた。剣城や、皆のために、手助けしてくれた」

それは、真実だった。けれど、天馬は全てを語ってはいない。核心部分を幾重にもオブラートで包みこんだそれに説得力があることを願って、じっと剣城を見詰める。
その言葉を噛み締めるように、剣城はしばらく黙りこんだ。何を思うのかは計り知れない。けれど、どうか、お願い――そんな願いも虚しく。彼は、天馬が思っていた通りの言葉を、口に出した。

「――何で、そのままにしておかなかった」
「え」
「インタラプトの改変によって、兄さんは怪我をしなかった。元気に、昔と同じようにサッカーをしていたんだろ……。『何で元通りに直した』? オレのせいで兄さんがサッカーを奪われなくても済んだ、それを、何でだ!?」
「それ、は」

それは。剣城優一が怪我をしなかった世界では――剣城京介がサッカーを捨てていたからだ。
本来の世界に戻すために、京介にサッカーを返すために。優一は全て分かっていて、インタラプトへの干渉を阻止した。
そして天馬も同じだ。この世界の優一から再びサッカーを奪うことを分かっていて――京介にサッカーを返した。
それが本来の歴史だからだ。あの時、それを変えることも出来たけれど――天馬は、そうすることを選ばなかった。
けれどそれを今目の前にいる彼に伝えてどうすると言うのだ。
今だって、疑念だけで、彼は憤りに顔を歪め、まるで泣きそうな顔をしていると言うのに。

「答えろ。松風天馬」

その声は切実な響きを伴っている。彼が想像の中の、『あったはずの世界』に苦しんでいるのが、分かる。
そんな彼に、偽りで答えることは、出来ない。

「――優一さんがサッカーを続けられた世界では、剣城は、京介は、サッカーをしていなかった」
「……ッ」
「言っただろ。優一さんは――剣城がサッカーをしている姿を見られるのが、嬉しいって言ってた」
「!」

突然の衝撃に、身体が大きく揺れる。喉元が締まって、束の間息が詰まった。
胸倉を掴む剣城の力は強く、必死に縋り付いてくるようにも思えて。
つるぎ、と。声にならない声で呼ぶと、はっとしたようにその腕の力が緩んだ。けれどその手は離れずに。俯いたまま、喉から絞り出すような声で。

「それでも、それでもオレは……ッ」

オレなんかより、兄さんに、サッカーを。

小さな、掠れた声が耳に届く。
悲痛な響きのそれに、天馬は自分の胸が裂かれるような痛みを覚えた。

「剣城。それでも、優一さんは……」

それ以上、言葉にはならなかった。
剣城は分かっている。兄が自分を想っていることも、過去の改変を防ぐことの必要も。分かっていて、それでも堪えられぬ憤りに身を焼かれているのだ。
気丈な剣城は、崩れ落ちることはしない。けれど、縋りつくように掴んでくる腕からは、徐々に力が抜けていき。
そんな彼に対し、慰めも、弁解も。何も言えず。何も出来ず。
天馬はそっと、震える彼の肩を抱いた。
ただ傍にいることだけが、今出来る唯一のことだとでも言うかのように。
彼の嘆きを、抱き留めていた。
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