だらだら日記
基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。
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渡せなかったチョコの話。(ティアクラ)
書かないつもりだったのですが、ネタが浮かんで萌えたら書くしかないよね!
ということで、ティアクラ・主リウでバレンタイン小話。
学パラ設定です。パラレルが駄目な方は回れ右です。
毎度ごめんの走り書き! なのに長くなった!
先日発行した「花、咲くまで」の設定での主リウです。「花~」より一年位前みたいで、くっついていない二人。
とはいえ、上記の話を読んでいなくても、二人が学生ってことが分かっていれば全く問題なく読めると思います。
ということで、ティアクラ・主リウでバレンタイン小話。
学パラ設定です。パラレルが駄目な方は回れ右です。
毎度ごめんの走り書き! なのに長くなった!
先日発行した「花、咲くまで」の設定での主リウです。「花~」より一年位前みたいで、くっついていない二人。
とはいえ、上記の話を読んでいなくても、二人が学生ってことが分かっていれば全く問題なく読めると思います。
渡せなかったチョコの話。
2月14日から3日が過ぎた。
あの、全校中がどこかそわそわした、期待をにじませた、浮かれた、もしくは落ち込みまくったあの一日を過ぎて、学校はおおむね通常の雰囲気に戻っている。
バレンタイン翌日の教室の各所では「俺、姉ちゃんと母ちゃんからしかもらえなかった」「俺は母親だけだぜ……」という不幸自慢で盛り上がる者、かと思えば上手くいったのか初々しく言葉を交わす新米カップルの姿なども目立ったが、今ではそこそこ落ち着いている。
そのそわそわした空気に酔っていた一人かもしれないリウも、今日はすっかり普通の放課後の教室で普通に帰りの準備をしていた。
しかし、その途中。
はあ、と小さく溜息を吐いた。
例年ならばまあ、女の子からもらえたらすっごいラッキーだよなーと大して期待せずにいて、クラスで目立つ女子に「男子皆に作ってきたの」チョコを一粒もらうが関の山であった。
それを思うと今年は二つ、ちゃんと自分のために作ったチョコが義理とはいえもらえたのだから幸せなものだ。友人とその姉が作った手作りチョコは、片方はまだちょっと怖くて食べられていないけど。
それはまあ、置いておいて、だ。
「……どーしよっかなぁ……」
リウは、鞄の中にあるチョコを見て、口の中で呟いた。
数日前から鞄の中に居座っているそれは、そこら辺のコンビニでいつでも買えるチョコ菓子である。他人から見て、特別それに意味があるようなものではない。ただし、リウにとっては意味があった。
これは誰かにもらったものではない。
誰かに――というか、タイガに、渡そうと思っていたチョコだった。
タイガは、この高校に入ってからリウが出会った友達である。
一つ年下ではあるが何故か不思議と馬が合い、また、その幼馴染たちも自然とリウを受け入れて、今では彼ら三人とあまり年齢性別関係ない友達づきあいをしていた。
しかし。
親友と呼んでもいいタイガに対して自分が抱く気持ちが、他の、ジェイルやマリカに対する気持ちと違うことに――タイガへ感じる、友達としてだけじゃなくて、別の意味での好きという感情を、リウが自覚してから数ヶ月が経つ。
自覚したはじめは戸惑った。おかしいだろ、変じゃないか、ばれたら絶対気まずくなるって――ああ、それでも好きなんだ。
それでも今の関係を壊したくない、何よりも同性に友情じゃなくて、恋愛の好きなんだって告白するような勇気はリウにはない。だからタイガへの気持ちは押し隠して、これまでどおりの関係を続けている。
それは辛いこともあるけれど、けれどこうして隣にいられる、その距離を変えるのが怖かった。離れるのが、嫌だった。
だから、ずっと隠し通す。ずっと友達の、親友のままでいたい。その、つもりだった。
しかし、バレンタインが近付くに連れて学校は、そして街はある種の特別な空気に包まれていた。
バレンタイン。一般的には、女の子が、好きな相手に想いを伝える日。そうじゃないこともあるのは知ってるけれど、一番の意味合いはそれだろう。
女の子はいいなあ、と思う。自分が女だったらタイガにチョコを渡してもおかしくない。現にマリカは毎年タイガやジェイルにチョコを渡しているらしい。当然義理チョコらしいが。今年はリウにもくれると張り切っていた。
想いを伝えるなんて、大それたことは別にいい。ただ、自分も贈ってみたかった。
幸いにも、最近では友チョコなんて言って気軽に友達同士でチョコを贈り合う風習もあるという。
友達でも、チョコ、渡していいんだ。
それを知って、何かが弾けた。
リウからじゃ数に入らねえよ、とか笑い飛ばされてもいいから、自己満足だけど渡したい。
思って、つい、チョコを買ってしまった。
やっぱり、バレンタインの空気に酔っていたのかもしれない。
とはいえ特設コーナーのいかにも、なチョコレートを買うほどにリウは勇気を持っておらず、だからと言って手作りなんてのも無理である。
そもそもあんまり本気チョコっぽくても恥ずかしいし気まずいし、と思って適当にコンビニで、タイガが好きそうなのを用意した。タイガだけじゃおかしいからジェイルとマリカの分も、と考えて二人には何だか申し訳なく感じた。
その上で、渡す時はあくまで軽い感じで、とか、変に思われないように、とか脳内で何度もシミュレーションして。
しかし、緊張して迎えた14日の放課後。
リウは、見てしまったのだ。
勇気を振り絞って、顔を真っ赤にした女の子に、チョコを渡されているタイガを。
――それを見て、一気に熱が冷めた。
何やってるんだろ、オレ。
あんな可愛い子に渡されてるのに、オレが渡しても意味ないじゃん。しかもこんなコンビニ菓子なんか。何であんなに浮かれてたんだろう。やっぱり、変だって。
その後、一緒に帰るのに顔を合わせたタイガに、リウは目を合わせられなかった。
その時は全て、マリカが取り出した手作りチョコのインパクトにそれどころじゃなくなって、気分も誤魔化されたのであるが。
すっかり渡すタイミングも、気力もなくなって。けれど未練がましくも自分で食べるのとかも嫌で。
だから、鞄の中に入ったままの、渡せなかったチョコレート。
とはいえ、もうあれから3日。リウとて落ち込み続けてはおらず、自然に普段どおりに振る舞えるようになっていた。
しかも今日は、ジェイルとマリカはそれぞれ用事があるらしく、リウはタイガと二人で帰ることになっていた。
四人でいるときは少しくらいタイガへの態度が不自然でも誤魔化せたけど、二人きりだとそうはいかない。
それでも、いつも通りでいればいいんだ。
そう思って歩き始めた帰り道、タイガがぽつりとリウに言った。
「リウ、……何か隠してねえ?」
「ええっんなことないって!」
反射的に上げた声は、いかにも隠し事しています、という感じの声であった。
タイガもそれを訝しく思ったのか眉根をひそめ、じっとリウの顔を見つめてきた。
「本当か?」
「本当ですって」
「でも、何か最近、リウおかしくねえ?」
「そ、そんなことッ」
ないって、そう答えようとして、けれどその前にタイガが目を逸らした。
いつも快活な彼らしくない。その上タイガは何か言いよどみ、らしくなく大きな溜息まで吐いたのだ。
「タイガ……?」
「……悪ぃ」
「へ」
「隠し事してんの、オレの方だな」
「……へ?」
突然の言葉に、リウはきょとんとした。
けれどそれに構わずにタイガはバツが悪そうな顔で、リュックの中をがさごそ探り出した。
そして物の少ないその中からすぐに探しものを見つけ出して、それを取り出すと、リウに差し出した。
「タイガ……何これ」
それは何の意味もない、ただの時間稼ぎの言葉だった。それの正体は一目瞭然だったからだ。
真っ赤なハートの模様の包装紙。シールに書いてあるのはSt.Valentineの文字。
何よりもリウはそれに見覚えがあった。
3日前に、タイガが女の子からもらっていた、チョコではないか。
しかしタイガはそれを、リウの方へ向けてずいっと差し出してきているのだ。
「これ、お前にやる」
「へっ?? タイガがもらったんじゃないの?」
勇気を出して女の子がくれたチョコを他人に渡すのは、さすがにルール違反だと思う。
しかし、タイガはそれに、言いたくなさそうに答えた。
「違う。クラスのヤツに、自分じゃ恥ずかしいから代わりにリウに渡してくれって、言われてたんだ」
「はい???」
「でも、何か、嫌だった。……悪ぃ」
「……タイガ……?」
訳が分からない。分からなさ過ぎる。自分に、チョコをくれる女の子がいたことも当然驚きだったけれど、何でタイガはそれを自分に渡さなかったのか。何で、こんなに嫌そうなのか。
自分が身内二人以外からもらえなかったから、リウがチョコをもらえたのが悔しかった?
違う、タイガはそういう性格ではない。むしろ笑って渡してからかってくるような、そんな気持ちのいい奴だ。
それとも、その女の子が好きだとか。それならば納得できる気もするけれど、何だかそれも違う気がする。好きな相手がいるならば、タイガだったらすぐに分かる。それ位タイガのことは見てきたつもりだ。
けれど自分でもその不快さの原因を分かっていないようで、タイガは顔をしかめたまま黙り込んだ。
とりあえずそのチョコを受け取ろうとしたけれど、渡される瞬間、一瞬だけタイガが手に力を込めて、それをリウに渡したがらない素振りを見せた。
「手紙、ついてるから返事とかはそっちにしてくれ」
「あ、うん……」
返事。ああ、返事。うん、このチョコをくれた子への、返事。
彼女には申し訳ないけれど今のリウはそれどころではなくなっていた。
何だか分からないけれど、分からないなりに混乱して、受け取ったチョコの包装を見ているとまた、あのバレンタインの不思議な空気が舞い戻ってきたみたいで、何だかどきどきして。
意識せず、リウは鞄に手を入れて、そこにあるそれを、ぎゅっと掴んだ。
そして。
「あ、あのさ、タイガ」
呼びかける声は何だか上ずっていた。
(おしまい!)
(もだもだ青春っていうか初々しいって言うかういういしすぎだろおおおはずかしいいい)
(そんな主リウが大好きです)
2月14日から3日が過ぎた。
あの、全校中がどこかそわそわした、期待をにじませた、浮かれた、もしくは落ち込みまくったあの一日を過ぎて、学校はおおむね通常の雰囲気に戻っている。
バレンタイン翌日の教室の各所では「俺、姉ちゃんと母ちゃんからしかもらえなかった」「俺は母親だけだぜ……」という不幸自慢で盛り上がる者、かと思えば上手くいったのか初々しく言葉を交わす新米カップルの姿なども目立ったが、今ではそこそこ落ち着いている。
そのそわそわした空気に酔っていた一人かもしれないリウも、今日はすっかり普通の放課後の教室で普通に帰りの準備をしていた。
しかし、その途中。
はあ、と小さく溜息を吐いた。
例年ならばまあ、女の子からもらえたらすっごいラッキーだよなーと大して期待せずにいて、クラスで目立つ女子に「男子皆に作ってきたの」チョコを一粒もらうが関の山であった。
それを思うと今年は二つ、ちゃんと自分のために作ったチョコが義理とはいえもらえたのだから幸せなものだ。友人とその姉が作った手作りチョコは、片方はまだちょっと怖くて食べられていないけど。
それはまあ、置いておいて、だ。
「……どーしよっかなぁ……」
リウは、鞄の中にあるチョコを見て、口の中で呟いた。
数日前から鞄の中に居座っているそれは、そこら辺のコンビニでいつでも買えるチョコ菓子である。他人から見て、特別それに意味があるようなものではない。ただし、リウにとっては意味があった。
これは誰かにもらったものではない。
誰かに――というか、タイガに、渡そうと思っていたチョコだった。
タイガは、この高校に入ってからリウが出会った友達である。
一つ年下ではあるが何故か不思議と馬が合い、また、その幼馴染たちも自然とリウを受け入れて、今では彼ら三人とあまり年齢性別関係ない友達づきあいをしていた。
しかし。
親友と呼んでもいいタイガに対して自分が抱く気持ちが、他の、ジェイルやマリカに対する気持ちと違うことに――タイガへ感じる、友達としてだけじゃなくて、別の意味での好きという感情を、リウが自覚してから数ヶ月が経つ。
自覚したはじめは戸惑った。おかしいだろ、変じゃないか、ばれたら絶対気まずくなるって――ああ、それでも好きなんだ。
それでも今の関係を壊したくない、何よりも同性に友情じゃなくて、恋愛の好きなんだって告白するような勇気はリウにはない。だからタイガへの気持ちは押し隠して、これまでどおりの関係を続けている。
それは辛いこともあるけれど、けれどこうして隣にいられる、その距離を変えるのが怖かった。離れるのが、嫌だった。
だから、ずっと隠し通す。ずっと友達の、親友のままでいたい。その、つもりだった。
しかし、バレンタインが近付くに連れて学校は、そして街はある種の特別な空気に包まれていた。
バレンタイン。一般的には、女の子が、好きな相手に想いを伝える日。そうじゃないこともあるのは知ってるけれど、一番の意味合いはそれだろう。
女の子はいいなあ、と思う。自分が女だったらタイガにチョコを渡してもおかしくない。現にマリカは毎年タイガやジェイルにチョコを渡しているらしい。当然義理チョコらしいが。今年はリウにもくれると張り切っていた。
想いを伝えるなんて、大それたことは別にいい。ただ、自分も贈ってみたかった。
幸いにも、最近では友チョコなんて言って気軽に友達同士でチョコを贈り合う風習もあるという。
友達でも、チョコ、渡していいんだ。
それを知って、何かが弾けた。
リウからじゃ数に入らねえよ、とか笑い飛ばされてもいいから、自己満足だけど渡したい。
思って、つい、チョコを買ってしまった。
やっぱり、バレンタインの空気に酔っていたのかもしれない。
とはいえ特設コーナーのいかにも、なチョコレートを買うほどにリウは勇気を持っておらず、だからと言って手作りなんてのも無理である。
そもそもあんまり本気チョコっぽくても恥ずかしいし気まずいし、と思って適当にコンビニで、タイガが好きそうなのを用意した。タイガだけじゃおかしいからジェイルとマリカの分も、と考えて二人には何だか申し訳なく感じた。
その上で、渡す時はあくまで軽い感じで、とか、変に思われないように、とか脳内で何度もシミュレーションして。
しかし、緊張して迎えた14日の放課後。
リウは、見てしまったのだ。
勇気を振り絞って、顔を真っ赤にした女の子に、チョコを渡されているタイガを。
――それを見て、一気に熱が冷めた。
何やってるんだろ、オレ。
あんな可愛い子に渡されてるのに、オレが渡しても意味ないじゃん。しかもこんなコンビニ菓子なんか。何であんなに浮かれてたんだろう。やっぱり、変だって。
その後、一緒に帰るのに顔を合わせたタイガに、リウは目を合わせられなかった。
その時は全て、マリカが取り出した手作りチョコのインパクトにそれどころじゃなくなって、気分も誤魔化されたのであるが。
すっかり渡すタイミングも、気力もなくなって。けれど未練がましくも自分で食べるのとかも嫌で。
だから、鞄の中に入ったままの、渡せなかったチョコレート。
とはいえ、もうあれから3日。リウとて落ち込み続けてはおらず、自然に普段どおりに振る舞えるようになっていた。
しかも今日は、ジェイルとマリカはそれぞれ用事があるらしく、リウはタイガと二人で帰ることになっていた。
四人でいるときは少しくらいタイガへの態度が不自然でも誤魔化せたけど、二人きりだとそうはいかない。
それでも、いつも通りでいればいいんだ。
そう思って歩き始めた帰り道、タイガがぽつりとリウに言った。
「リウ、……何か隠してねえ?」
「ええっんなことないって!」
反射的に上げた声は、いかにも隠し事しています、という感じの声であった。
タイガもそれを訝しく思ったのか眉根をひそめ、じっとリウの顔を見つめてきた。
「本当か?」
「本当ですって」
「でも、何か最近、リウおかしくねえ?」
「そ、そんなことッ」
ないって、そう答えようとして、けれどその前にタイガが目を逸らした。
いつも快活な彼らしくない。その上タイガは何か言いよどみ、らしくなく大きな溜息まで吐いたのだ。
「タイガ……?」
「……悪ぃ」
「へ」
「隠し事してんの、オレの方だな」
「……へ?」
突然の言葉に、リウはきょとんとした。
けれどそれに構わずにタイガはバツが悪そうな顔で、リュックの中をがさごそ探り出した。
そして物の少ないその中からすぐに探しものを見つけ出して、それを取り出すと、リウに差し出した。
「タイガ……何これ」
それは何の意味もない、ただの時間稼ぎの言葉だった。それの正体は一目瞭然だったからだ。
真っ赤なハートの模様の包装紙。シールに書いてあるのはSt.Valentineの文字。
何よりもリウはそれに見覚えがあった。
3日前に、タイガが女の子からもらっていた、チョコではないか。
しかしタイガはそれを、リウの方へ向けてずいっと差し出してきているのだ。
「これ、お前にやる」
「へっ?? タイガがもらったんじゃないの?」
勇気を出して女の子がくれたチョコを他人に渡すのは、さすがにルール違反だと思う。
しかし、タイガはそれに、言いたくなさそうに答えた。
「違う。クラスのヤツに、自分じゃ恥ずかしいから代わりにリウに渡してくれって、言われてたんだ」
「はい???」
「でも、何か、嫌だった。……悪ぃ」
「……タイガ……?」
訳が分からない。分からなさ過ぎる。自分に、チョコをくれる女の子がいたことも当然驚きだったけれど、何でタイガはそれを自分に渡さなかったのか。何で、こんなに嫌そうなのか。
自分が身内二人以外からもらえなかったから、リウがチョコをもらえたのが悔しかった?
違う、タイガはそういう性格ではない。むしろ笑って渡してからかってくるような、そんな気持ちのいい奴だ。
それとも、その女の子が好きだとか。それならば納得できる気もするけれど、何だかそれも違う気がする。好きな相手がいるならば、タイガだったらすぐに分かる。それ位タイガのことは見てきたつもりだ。
けれど自分でもその不快さの原因を分かっていないようで、タイガは顔をしかめたまま黙り込んだ。
とりあえずそのチョコを受け取ろうとしたけれど、渡される瞬間、一瞬だけタイガが手に力を込めて、それをリウに渡したがらない素振りを見せた。
「手紙、ついてるから返事とかはそっちにしてくれ」
「あ、うん……」
返事。ああ、返事。うん、このチョコをくれた子への、返事。
彼女には申し訳ないけれど今のリウはそれどころではなくなっていた。
何だか分からないけれど、分からないなりに混乱して、受け取ったチョコの包装を見ているとまた、あのバレンタインの不思議な空気が舞い戻ってきたみたいで、何だかどきどきして。
意識せず、リウは鞄に手を入れて、そこにあるそれを、ぎゅっと掴んだ。
そして。
「あ、あのさ、タイガ」
呼びかける声は何だか上ずっていた。
(おしまい!)
(もだもだ青春っていうか初々しいって言うかういういしすぎだろおおおはずかしいいい)
(そんな主リウが大好きです)
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