だらだら日記
基本的に結構カオスなつれづれ日記。同人耐性のない方はご遠慮ください。
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好きから始まるエトセトラ
幻水でもぱっと思いついた話なんかは、これからはブログにも書いていきますです。
一発目は主リウ……いや、主+リウ?です。ゲームより前の話……一年前とかそんな感じかなあ(アバウト)。
えっと、自分でもまだ上手く説明できない感じなのですが、続いたらその内主リウになる話、でしょうか。
続けられるかはまだ分かりません。
……後で手直し加えるかもですー。
一度書いたのが全部キレイに吹き飛んだので、ヤケ食いしてから立ち直ってもう一度書き直しました。
そんな話だったりもします(苦笑)。
好きから始まるエトセトラ ~あらしのよるに~
その日は風が強かった。
年に一度、あるかどうかという位の突然の大風に、昼間のシトロ村は大人も子供も総出で、特に風の強まる夜に向けて、作物の保護や壊れかけの柵の補修なんかにみんなでおおわらわだった。
おかげで、夕方にはみんなへろへろで。
けれど、いつもと違うトクベツな空気に、子供達は不謹慎だけれども祭りの前のようにわくわくして、心は疲れ知らずだった。
こんな時は、家でじっとしているよりもみんなで集まってはしゃぎたい。
けれど、マリカや、ちょうど母親が帰っているジェイルは、夜に家を抜け出すことなんて出来なかった。
どこの家も、しっかり扉と窓を閉め切っている。
だから、夜にこっそりたまり場に集まれたのは、一人で暮らしているタイガとリウだけ。
戸締りはしっかりして、二人きり、寝床の上に寝転んで、他愛もないことを話していた。それだけだけれど、聞こえる風の音が、トクベツなどきどきを運んでくるようで、楽しかった。
けれどその内にリウは、段々そわそわし始めていた。
それにタイガは気付かない。心底わくわくしてるタイガを見て、リウはちょっと頬を掻いた。
「……けどさ、タイガー?」
「何だ、リウ?」
「ぶっちゃけ、ここってさ……」
ぶわーっがたがたっ!
言いかけたリウの言葉を遮るように、外を一際強い風が吹き去った。たまり場の建物が大きく軋み音を立てた。
びくうっ! その音に反射的に身をすくめて毛布に包まりこみながら、リウは自分とは正反対に楽しそうな顔のままのタイガに溜息を吐いた。
「……今にも、壊れそうじゃ、ね?」
「そっか?」
「ああもうっ! タイガに同意を求めたオレがバカでしたーっ!」
大らかというか、鈍感というか、何と言うか!
それがタイガだと分かってるけど、やっぱりこの不安は共有できていないのか。
はっきり言ってここ、たまり場の建物は、ぼろっちい。元々は廃屋だった所に、子供達が物を持ち込んだり修理したりして自分達の場所として仕立て上げた所なのだ。
修理した、とはいえ、それでも不安が残る。例えばこんな風に、風が吹く度ぎしぎし鳴る所とか、風が強くなる度吹き飛ぶんじゃないかって位大きく揺れる所とか。
そんな嫌ーな可能性を思い浮かべてしまっては、さっきからリウは嫌などきどき感を味わっていた。それでも気を紛らわせようといつもみたいにタイガとしゃべっているけれど、いつもよりも挙動不審になってしまっていたのは否めない。
しかし、だからと言って今から家に帰るにもこの強風の中無事に辿り着けると思わないし、だったらせめて風が弱まるまではここにいるしかないのだ。だったらタイガのように今の状況を楽しんでしまった方がいいのかもしれない。
とは言え、やっぱり素直に楽しめないんだけど。
「にしても、何で急にこんなに風が強くなったんだ?」
「あー、それはさ、あっちから温かい空気が来て、こっちからは冷たい空気が来て、それで気流が」
気分を紛らわせようとタイガの疑問に答えようとして、途中でリウははっと口をつぐんだ。タイガの頭の上にはてなマークが浮かんでいるのが見えた気がしたからだ。
リウの頭には、きっとこの村の誰よりも沢山の知識が詰まっている。そういう風に育ってきたからだ。けれど、そんな知識を賢しらぶるように語るのは、嫌だった。
けれどそんなリウを、不思議そうにタイガは見返してきた。
「何で途中で止めるんだ?」
「いや、面白くないでしょー」
「そんなことないぞ」
「うそうそ」
「んだよ、気になるだろー」
「あーえっとですねー……後は忘れました」
「ウソつけ!」
「マジですからっ!」
だからこれでおしまい、なっ!
詰め寄るタイガを押さえつけながら、けれど次の瞬間。
ぶわあがたがたがたっ!!!
思い出したように再び強く吹いた風が、ひときわ大きくたまり場を揺らした。
「ひゃあっ!」驚いた声を上げてリウが毛布に包まりこむと、それをきょとん、と見ていたタイガが、呆れたように噴き出した、けれどそれに反応する気力もなくてリウは毛布から顔だけ出してタイガを恨めしそうに見た。
「タイガ……マジで、壊れそうなんですけど」
「だーいじょぶだって。ここ、オレが生まれる前からあるけど今まで壊れたことねえらしいから」
「……その分傷みが募って今回ついに、とは考えないのね」
どこまでもポジティブシンキング。そんなタイガと話していると、こちらまで何だか引きずられてしまう。
それでもまだ不安を残していたリウに、タイガは組み付いてきた。
「んだよ、だったらこーいう時は、な」
「な……っひゃ、はははははっ、タイガ、何っ」
「笑ってごまかせばいいじゃねえかっ!」
「ちょっ、だからっていきなりわきの下くすぐるのはナシっ!」
「こっちはどーだ?」
「ひゃう、や、タイガやめっまじでっ、ゃっ」
目尻に涙まで浮かべてリウが訴えると、ようやくタイガの手は離れていった。
悪戯な子供の目で、にっかり笑ってリウに訊く。
「で、どーだ?」
そんなタイガを見て、リウは呆れて苦笑した。もう、笑うしかなかった。
「……全く。タイガには敵わねーな」
笑っている内に、嫌などきどきがどこかに吹き飛ばされていた。
あははー、ちょっと調子を取り戻して、涙を拭いながら今度こそタイガと同じ様にリウは笑った。
けれどそれを見て、何故かタイガは不思議な顔をした。
「へ、何、どしたの??」
じいっと、さっきまで笑みを消した目がリウを見つめてくる。
銀灰の目、見慣れたそれとは何だか違って見えて、リウは慌てた声を出した。
「リウ」
それはさっきまでのふざけた声じゃなくって、何か真面目っぽい声で。
まるで、外のトクベツな空気が、タイガにまで伝わってきているみたいで。何だか変に……緊張してる?
ちょっと何でオレ、こんなに落ち着かなくなってるんだろ? だって相手はタイガだよ?
変な空気を誤魔化すように、へらり、笑ってみせようとして、けれどそれより先に、タイガが、口を開いた。
「好きだ」
「…………はい?」
(つづくと思う)